ITSSを活用したエンジニア育成
当社では、エンジニア一人ひとりの成長を最大限にサポートするために、ITSS(ITスキル標準)を活用したキャリアサポートを行なっています。
ITSS(IT Skill Standard)とは
「プロフェッショナル」を育てるための指標
- ITSSは「IT Skill Standard」の略で、「ITスキル標準」とも呼ばれる
- IT領域の人材を教育・訓練する際の指標として経済産業省が2002年に策定した
- 2023年には“新しい分野に対する学び直し“のための指標である「ITSS+(プラス)」が策定された
近年、IT業界における顧客ニーズはますます多様化・深化し、IT企業に求められる役割も、単なるプロダクトの供給者から、顧客と共に価値を創出するパートナーへと変化しました。
そこで必要となったのが、高い専門性を持つ人材、すなわち「プロフェッショナル」の存在です。
ITSSは、そんな「プロフェッショナル」を求める企業と目指す個人、両方が参照できる優れたスキル指標です。
ITSSの目指すプロフェッショナル像
ITSSにおけるプロフェッショナルとは、ビジネスを成功させ、産業界の発展に貢献する人材であり、以下のような要件が求められます。

- 顧客あるいは組織に対してのコミットメントの達成
- 後進の育成
- 自らの実務能力を向上させる活動の継続的な実践
- 社会的な責任と専門家としての倫理観の保持
また、プロフェッショナルとして高い価値を提供するには、技術的なスキルだけでなく、コミュニケーション、ネゴシエーション、リーダーシップなどのパーソナルスキルや、ビジネススキルの高さも重要です。
ITSSのキャリアフレームワーク
ITSSのキャリアフレームワークでは、IT領域の職種を11種類に分類し、そのうえで能力に応じた7段階のレベルを設定しています。
- 横軸:11の職種と35の専門分野
- 縦軸:能力レベル(色のついている部分)

(出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2008のキャリアフレームワーク」より)
これまでのIT人材の育成は、プログラマ→SE→プロジェクトリーダーといった単線的なパスが一般的でした。
ITSSは、スキルの多様化の方向性と内容について共通の枠組を提供することで、職種転換を含む幅広いキャリアパスの可能性を整理しました。
以下はプロジェクトマネジメント職における一例です。

(出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 1部:概要編 」より)
なお、この図では複雑な表現を避けるため職種転換の前後を同一レベルで表していますが、実際には職種により求められるスキルや経験が異なるため、多くの場合転換後は転換前よりも下位のレベルとなります。
ITSSの11の職種
マーケティング
市場の動向を分析し、顧客のニーズに合わせた事業戦略や販売戦略を立案します。
セールス
顧客の経営方針や課題を理解し、それに対する解決策や製品を提案します。
コンサルタント
顧客のビジネス戦略を実現するためにアドバイスを行います。特にITに関する投資や方針を決める際に、適切な提言をし、経営判断をサポートします。
ITアーキテクト
顧客のビジネス戦略に合ったITシステムの設計を行います。システムが高品質で、効果的に機能するように設計基準を決め、技術リスクを事前に評価します。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトの計画から実行までを管理します。品質やコスト、納期を守り、プロジェクトを円滑に進行させるためにリーダーシップを発揮します。
ITスペシャリスト
顧客のシステム基盤を設計・構築し、運用や保守を行います。システムの性能や回復力、可用性を確保し、安定した運用を支援します。
アプリケーション
スペシャリスト
業務の課題解決を目的に、アプリケーションの設計・開発・テスト・保守を担当します。開発したアプリケーションの品質にも責任を持ちます。
ソフトウェア
デベロップメント
ソフトウェア製品の企画から設計・開発までを行います。ビジネス戦略に基づき、ソフトウェアの機能性や信頼性を確保するために開発を行います。
カスタマーサービス
顧客のシステム環境に合ったハードウェアやソフトウェアを導入・カスタマイズ・保守します。システムが適切に運用されるように支援し、顧客満足を高める役割を担います。
ITサービスマネジメント
システムの運用を管理し、サービスの品質向上を目指します。システム稼働情報を収集・分析し、安定的なシステム運用を維持することに責任を持ちます。
エデュケーション
ITに関連する技術の研修カリキュラムを設計・開発し、教育を実施します。ユーザーのスキルアップを支援し、必要な教育プログラムを提供します。
ITSSのスキルとレベルの関係
スキルとは「実務能力」
- ITSSにおけるスキルとは「実務能力」を指す
- 資格取得はレベルの「入り口」であり、実務能力の習得が重要
ITSSにおけるスキルとは、実務能力を指します。単に個別の要素技術を束ねたものではなく、要素技術をいかに選択し、いかに適用して課題解決ができるかに着目しています。

(出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 1部:概要編」より)
7段階のレベルのうち、レベル1〜レベル3までは基本的に情報処理技術者試験の合格をもってレベルが判定されます。レベル4以上は情報処理技術者試験の合格に加え、業務経験等で判定されます。
情報処理技術者試験以外の認定試験は、スキル標準ユーザー協会によってレベル別の一覧が公開されており、各認定機関などでも閲覧できます。(例:LPI-Japan「ITSS(ITスキル標準)との関係」)
ITSSでは、認定試験の合格は当該レベルの入り口に立ったと見做されるに過ぎません。資格を取得した上で、実務能力の習得に向けて経験を積むことが重要です。各レベルで要求される実務能力は以下のとおりです。

(出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 1部:概要編 」より)
参考:キャリアフレームワークの具体例
以下は、当社代表 野戸谷のキャリアフレームワークです。該当のスキルレベルに丸印をつけています。

(出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2008のキャリアフレームワーク」より)
ITアーキテクトやITスペシャリストとしてプロジェクトをリードできる実務能力を有し、幅広い職種において上位レベルの能力を獲得しながら業界に貢献するコンサルタントとしてのキャリアを確立したことが読み取れます。
企業は、将来の方向性を見据えた上で、ビジネス戦略に基づき体系的にエンジニアを育成する必要があります。また、エンジニア自身も、自立したプロフェッショナルとして自らのキャリアパスを明確に意識し、その実現を目指していくことが重要です。
ITSSは、企業と個人がスキル戦略を練るための共通の枠組になるものです。枠組みがはっきりとしていれば、企業と個人それぞれがどのスキルの、どのレベルを目指しているのか互いに意識することができます。
野戸谷技術合同会社では、ITSSを活用した具体的かつ客観的なキャリア開発、スキル開発でエンジニアをサポートしています。私たちの一員として、業界で評価される「プロフェッショナル」を目指してみませんか?
